慶應義塾大学 予防医療センター

医局員の声

予防医療センターではさまざまな場所で研鑽を積んだ医師たちが集まり、共に働いています。一人ひとりのバックグラウンドに合わせ、私たちの働き方も多様です。育児中で時短勤務を行なう医師、研究活動と臨床業務を両立する医師など、それぞれが思い描くキャリアを実現しています。

予防医療センターで働く医師の経験、声、一週間のスケジュール例をご紹介いたします。

槇野 香奈子先生

2003年奈良県立医科大学卒業。奈良県立医科大学で研修をしたのち、関連病院で一般内科医師として幅広い領域・臨床の経験を積む。2013年より慶應義塾予防医療センター所属し、在職中に論文博士を取得。臨床を中心に行っている。

三石 木綿子先生

2003年慶應義塾大学卒業。専門領域は内分泌代謝内科。関連病院で経験を積み、大学院へ。大学院生時代に第一子を出産、育児をしながら博士号を取得。2017年より慶應義塾予防医療センター着任し、臨床と二児の子育てを両立した日々を送る。

楠本 大先生

2007年慶應義塾大学卒業。専門領域は循環器内科。2019年より慶應義塾大学予防医療センター着任。人工知能や生物情報学を駆使して血管から心臓病にアプローチする画期的な治療法の研究を進めながら、臨床に取り組む。

※所属は取材当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

三者三様の歩みを経て、
慶應義塾大学予防医療センターへ

槇野
お二人とも慶應義塾大学の医学部出身なんですね?
楠本
そうです、私が研修医をしていた時に、ちょうど三石先生が指導医としていらっしゃいました。でも研修でお世話になったり、所属が一緒であったりしなければ、もう誰がどの大学出身かは実はよく知らないんですよね。
三石
こういう機会でもなければ聞くこともないですしね…。私と槇野先生は2003年、スーパーローテートが導入される1年前の卒業ですが、スーパーローテート導入前後で制度も大きく変わり、その世代間の違いの方が大きい気がします。
槇野
そうですね。私が学んだ奈良県立医科大学では、卒業後はすぐに医局に入り専門科へ行くという形でした。私は奈良県立医科大学の第一内科(循環器・腎臓・代謝・膠原病内科)(当時)に入り、2年間研修をして、3年目から第一内科の関連病院へ。循環器と腎臓の勉強をしながら、どちらかといえば私は臨床志向だったので、胃カメラやお腹のエコー、入院患者さんを診るなどいろいろ経験させていただいて。その後は奈良県立医科大学で研修医を教えたりしながら、こちらに来るまでは外病院で診察を続けていました。
三石
スーパーローテートが始まる前ですが、第一内科がカバーする領域は広かったんですね。
槇野
特殊な状況だったとは思います。第一内科出身でも内視鏡のトレーニングの資格まで持っていらっしゃる先生がいらっしゃったりしましたから。
三石
私の場合、卒業後はそのまま慶應義塾大学病院で研修医生活を送り、3年目からは関連病院に出張しました。研修医生活の最初の2年間は内科のすべての科を順番に周り、出張後の2年間は内科一般を担当、5年目に専門科を決めて、慶應義塾大学病院に戻ってきた形になります。5年目以降は専門医を取ることを目標に、病棟業務を行なっていました。卒業後すぐに大学院に入る方もいると思いますが、私はある程度、病棟で経験を積んでから大学院に進学。その少し後に第一子が誕生しています。子育てもしながら研究を続ける中で、慶應義塾大学予防医療センターの所属になりました。
楠本
ここに来られてから学位を取得されたんですね。
三石
そうなんです。その方が実験・論文のための時間を確保しやすくて、大学院生として学位が取れる最後の年になんとか取得しました。楠本先生はどのタイミングで大学院に進まれたのですか?
楠本
卒業後3年目です。私は2007年卒業、いわゆるスーパーローテート世代なので、2年間研修をして、3年目から大学院に進学しました。大学生の頃から循環器に関わる研究をしたいと思っていたので、大学院で循環器内科に所属した流れになります。といっても早朝から臨床を行い、夜になってようやく研究室に来て、日が変わるぐらいに帰宅する多忙な毎日で…。
槇野
病棟業務があると、なかなか研究の時間は取れないですよね。
楠本
そうなんですよ。それでもどうにか続けていたところ、10年目に地域の総合病院へ派遣され、2日に1回オンコールがある生活に突入しまして(笑)。その後、ご縁があって慶應大学病院に戻ることになったのですが、多忙な臨床業務をこなしながら研究をするのがとても大変で。当直が終わってそのまま外来業務を行う日は、研究をする余力がありませんし…。もう少し研究にリソースを割きたいと感じていたところで、2019年に慶應義塾大学予防医療センターに来ました。

それぞれの人生に合った
働き方・キャリアを追究できる環境

楠本
慶應義塾大学予防医療センターに着任してまず驚いたのが、「当直がない生活で、いかに心身ともに整うか」ということ。大学を卒業してから12年、初めて当直のない生活をして衝撃を受けました。
槇野
私も今振り返ると、習慣的に当直があった時は生活がかなり崩れていて、ちょっと疲れてしまっていた部分があったと思います。その点で、慶應義塾大学予防医療センターは生活リズムを崩さずに働くことができますし、ここの業務以外の時間を外勤や研究、自分の時間として確保しやすいのが利点ですね。それこそ、楠本先生や三石先生のように、研究、育児といったそれぞれが求める働き方ができているのは、慶應義塾大学予防医療センターだからこそという気がします。
三石
そうですね。子育て班の一員として言いますと、ここには私以外にも子育てをしながら働いている方達がたくさんいます。みなさん、子どもの年齢がさまざまですから、育児について相談したり、雑談したりすることもありますよ。うちは今、上の子が中学生、下の子が小学生なので以前よりは落ち着きましたが、保育園の頃は感染症にひたすらかかり続けて難しい時期がありました。感染症と戦う年齢の子どもがいる看護師さん、ドクターたちは大変だと思いますが、ここは何かあったら助け合おうという方ばかりなので、そういう点でも仕事がしやすい環境だと思いますね。
楠本
私のように研究を続けたい立場からすると、予定を組みやすい生活がゆえに研究の時間を比較的確保できているのは、慶應義塾大学予防医療センターにいるおかげです。働き方やキャリアが多様であることに加えて、ここの人間ドックの業務は多職種の綿密な連携で成り立っていることも特徴で、そこから得るものも多いと感じています。私の専門ではない領域の先生方、管理栄養士、放射線技師、画像解析関係の方々の意見を聞く機会が多く、総合的な知見が広がりました。
槇野
外来ですと、疾患のための検査結果、自分の専門に関わる検査結果しか手元に来ませんが、ここはあらゆる全身の結果が戻って来ますからね。そしてその結果を受診者に伝えるとなると、まず自分が深く理解していなければいけません。私も自分が疑問に思ったことは、他の先生方の意見を求めるようにしています。
三石
自分の専門外の領域について責任を持って話すためには必要ですよね。その姿勢がみなさん共通でありますから、他の科の先生方にお声がけしやすい雰囲気だと感じます。

「予防医療」から拓ける未来

楠本
「予防医療」という概念はまだ新しいものですが、私が研究を進めている血管と心臓病の観点からすると、人の人生を左右するとても大切な考え方なんです。医者になりたての頃は「心筋梗塞の人の命を救う」という、ある種、最後の砦の部分に目がいっていましたが、研究を続けていると「命は救えても、血管は元に戻らない」、「薬も必要ないような段階で気をつけていれば、将来違ったのではないか」と思うことが多々あります。
三石
心筋梗塞、心不全は生活習慣病が行き着く先、伊藤裕先生が提唱されている「メタボリックドミノ」の最下流ですからね。やはりその手前の上流から中流にかけての段階に手を打てていれば、と思います。
槇野
ただ、その上流から中流にかけての段階では自覚症状がないのが厄介ですよね。
楠本
そうなんです、症状がないので患者は対策するモチベーションが上がらない。でも症状が出てから治療するのでは遅くて、「今」がちょうど分岐点かもしれないですよと、人間ドックの結果説明の際にいかにモチベーション付けをするかが、本当に重要になってきます。
三石
そう思うと、「予防医療」が担うものは改めて大きいなと感じますね。加えて、特定の疾病だけを診るのではなく、もっと広い視野で受診者と向き合う必要があることも良い経験になっていると思います。
楠本
その広い視野は、循環器内科の臨床や研究でもでも活かせるなと最近思っているんです。循環器内科では特に再発を防ぐためにも患者のライフスタイルを考えないといけないんですが、疾病をより俯瞰して捉え、「この方の人生で何が一番幸せな選択か」まで視野を広げられるようになったのは、慶應義塾大学予防医療センターの経験あってのことです。
槇野
おっしゃる通りですね。私もこちらに来てから、ライフスタイルまで踏み込んだアプローチの必要性を感じ、実践するようになりました。
三石
今ある疾病の治療だけではなく、これからより元気に豊かに過ごすための全身管理を受診者の方と伴走することができるのは、学びの多い経験ですよね。今後どういった道に進むとしても、ここで得た知見は必ず役に立つだろうと思っています。

医師のスケジュール例

※以下のスケジュールは特定の個人のものではなく、複数の医師の予定を掛け合わせた一例になります。

研究活動と臨床業務を両立する医師の場合

月曜
  • 09:00 ~ 12:00
    外勤
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食
  • 13:00 ~ 17:00
    病院外来
  • 17:00 ~
    カンファレンス、研究
火曜
  • 09:00 ~ 12:00
    受診者対応
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食
  • 13:00 ~ 16:00
    外勤
  • 16:00 ~
    カンファレンス、研究
水曜
  • 08:00 ~ 12:00
    緊急対応当番
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食
  • 13:00 ~ 17:00
    専門ドック対応
  • 17:00 ~
    結果表作成、検査データ読影
木曜
  • 08:00 ~ 09:00
    カンファレンス
  • 09:00 ~ 12:00
    受診者対応
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食
  • 13:00 ~ 16:00
    受診者対応
  • 16:00 ~
    結果表作成、研究
金曜
  • 終日
    研究、検査データ読影
土曜
  • 08:00 ~ 12:00
    緊急対応当番、研究
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食
  • 13:00 ~
    研究

子育てと臨床業務を両立する医師の場合

月曜
  • 09:00 ~ 12:00
    外勤
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食
  • 13:00 ~
    業務なし(子どもの送迎など)
火曜
  • 09:00 ~ 12:00
    外勤
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食
  • 13:00 ~
    業務なし(子どもの送迎など)
水曜
  • 09:00 ~ 12:00
    結果表作成(在宅リモート作業)
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食兼移動
  • 13:00 ~ 16:00
    人間ドック結果説明
  • 16:00 ~ 16:30
    事務作業
  • 16:30 ~
    業務なし(子どもの送迎など)
木曜
  • 09:00 ~ 12:00
    外勤
  • 12:00 ~ 13:00
    昼食兼移動
  • 13:00 ~ 16:00
    人間ドック結果説明
  • 16:00 ~ 16:30
    事務作業
  • 16:30 ~
    業務なし(子どもの送迎など)
金曜
  • 08:15 ~ 12:20
    人間ドック診察
  • 13:00 ~ 14:00
    昼食
  • 14:00 ~
    業務なし(子どもの送迎など)
土曜
  • 終日
    専門医維持のため外勤、学校関連行事等