慶應義塾大学病院 予防医療センター

予防医療とは

病気の治療を中心に行う臨床医学に対して、予防医学は病気の罹患予防を行う学問とされてきました。
しかし急速な高齢化により日本人の疾病構造が変化している現在、予防医学はより広い概念を含むものになっています。

予防医学とは病気の罹患予防だけではなく、健康寿命の延伸を目指す、総合的な健康増進のための医学であるべきだと考えており、そのための医療行為が予防医療と呼ばれるものです。

慶應義塾大学病院と予防医療

慶應義塾大学病院は開院以来、慶應義塾創立者福澤諭吉の「独立自尊」、「実学」の精神に基づき、初代医学部長・病院長である北里柴三郎が説いた「基礎・臨床一体型の医学・医療の実現」「学力は融合して一家族の如く、全員拳って努力する」ことを実践してきました。さらに北里は「病を治すこと吾猶人のごとく也 必ずや病を無から使めん乎」、「摂生は本にして治療は末なり」と予防医学を原点とし、慶應義塾大学医学部に予防医学教室を設立しました。

北里の精神に則り私たちは、あらゆる人々が生涯にわたって健康な生活を送ることのできる豊かな社会を目指して、未来型の予防医療を追求しています。

今後力を入れたいのは、「フレイル(虚弱)」対策であり、正確な診断システムを開発し、治療介入を行って行きます。

フレイルには、1.老化や身体機能の衰えによる身体の虚弱、2.鬱病や認知症などの心・認知の虚弱、3.貧困や孤立などの社会性の虚弱の3つがあります。最新の機器を用いたサルコペニア(高齢になるに伴い、筋肉の量が減少していく現象)の評価、AIによる心の診断スクリーニングモデルの開発や、環境情報取得機器等を用いて身体と心のフレイル対策を進めて行きます。社会的フレイルは一見医療とは無関係のようですが、体や心のフレイルの原因になる可能性があり、予防医療センターとしてこの問題にも先導して関与すべきだと考えています。

福澤諭吉は、『慶應義塾の目的』において「全社会の先導者たらんことを欲するものなり」と語りました。世界でも最も早く超高齢化社会になった日本から、未来型の予防防医療を世界に向けて発信していきたいと思います。